WordPressサイトのリニューアルは、見た目を作り直す作業ではありません。作り直すのは中身の設計で、見た目はその結果です。ここを取り違えると、公開直後に検索からの流入が落ちたり、公開後の更新が前より面倒になったりします。
また、リニューアルには「全部作り直す」以外の選択肢もあります。今の課題が設計に起因するのか、運用に起因するのかで、必要な工事の規模はまるで変わります。
この記事では、全面リニューアルと部分改修の見分け方、費用が何で決まるか、進め方、そして検索評価を落とさないために必ずやることを整理します。あわせて、公開の切り替えをメンテナンス表示なしで行う方法もご紹介します。
目次
- 1. 全面リニューアルか、部分改修か
- 2. 費用は何で決まるのか
- 3. リニューアルの進め方
- 4. 検索評価を引き継ぐために必ずやること
- 5. 公開の切り替えはメンテナンス表示なしでできる
- 6. よくある失敗
- 7. まとめ
1. 全面リニューアルか、部分改修か
「そろそろリニューアルを」と考えはじめたとき、最初に決めるのはこの分かれ道です。全面リニューアルは費用も期間もかかりますが、部分改修では動かせないものがあります。逆に、部分改修で足りる課題に全面リニューアルをぶつけると、費用の大半が現状維持に消えます。
判断の目安は次のとおりです。
| 今ある課題 | 向いている工事 | 理由 |
|---|---|---|
| サイトの目的や訴求そのものを変えたい | 全面リニューアル | ページ構成と導線から作り直す必要があります。既存の枠組みの上では組み替えられません |
| スマートフォンでの表示が崩れている | 全面リニューアル | スマートフォン対応が後付けのテーマは、部分的に直しても別の箇所が崩れます |
| 管理画面から直せる箇所が少なく、毎回依頼が必要 | 全面リニューアル | 更新できる範囲はテーマの作りで決まります。設計しなおす以外に広げる方法がありません |
| デザインは気に入っているが古く見える | 部分改修 | 配色・余白・書体の調整で印象は大きく変わります。構成を触らずに済みます |
| 特定のページや機能だけ足りない | 部分改修 | 該当箇所の追加で済みます。既存ページに手を入れる必要はありません |
| 表示が遅い | まず調査 | 原因がサーバ・プラグイン・画像・テーマのどれかで打ち手が変わります。作り直しが答えとは限りません |
| WordPressやPHPのバージョンが古い | まず調査 | 更新だけで済む場合と、テーマ・プラグインが対応しておらず作り直しになる場合があります |
補足「表示が遅い」「バージョンが古い」は、リニューアルの動機として最も多い一方で、そのままでは工事の規模が決まりません。現状を調べたうえで、直す範囲を決めるところから始めるのが結果的にいちばん安く済みます。
2. 費用は何で決まるのか
リニューアルの見積りは、新規構築の要素に「現状を調べる工程」が加わった形になります。ここが新規との最大の違いです。
01現状調査にかかる手間
今のサイトが誰の手で、どう作られているかで調査の重さが変わります。制作会社が分からない、テーマが独自に改造されている、プラグインが多数入っている、といった場合は調べる時間が先にかかります。サーバ・WordPressのバージョン・使用中のプラグイン一覧を手元に用意しておくと、この工程が短くなります。
02引き継ぐデータの量と形
記事や商品情報をそのまま引き継ぐのか、構成を変えて入れ直すのかで変わります。同じWordPress同士でも、投稿の作りが違えば移行にはひと手間かかります。他のCMSからの移行はさらに工程が増えます。
03作り直すページの種類の数
ページの枚数ではなく、何種類のレイアウトが必要かで費用が決まります。同じ形のページが50枚あっても、テンプレートは1つで済みます。
04必要な機能
公式プラグインで実装できるか、開発が必要かで大きく変わります。見積り差が最も出やすいのがここです。
05デザインの有無
デザインを支給する場合と、企画・デザインから依頼する場合とで工程がまるごと増減します。既存のロゴ・配色・写真が使えるかどうかも確認しておいてください。
相場を1つの金額で捉えるのは難しく、同じ規模でも既製テーマを使うか独自に作るかで数倍の差が出ます。複数社から見積りを取り、内訳の粒度をそろえて比べるのが確実です。費用の内訳と見積りの確認項目は、WordPress制作会社の選び方と費用の相場に詳しくまとめています。
補足公開後には保守費用が別途かかります。リニューアルで作り直しても、更新を止めれば脆弱性はまた溜まります。相場感はWordPressの保守費用の相場は?をご覧ください。
3. リニューアルの進め方
工程はおおむね次の順で進みます。新規構築との違いは、最初に調査が入ることと、最後に切り替えの段取りが入ることです。
| 工程 | やること | 依頼側で用意しておくもの |
|---|---|---|
| 現状調査 | サーバ・WordPress・テーマ・プラグインの構成把握、既存URLの一覧化、アクセス状況の確認 | サーバとドメインの契約情報、WordPressの管理者アカウント |
| 企画・設計 | 目的の整理、ページ構成、残すページと捨てるページの選別、更新体制のヒアリング | 今のサイトで困っていること、公開後に自分たちで更新したい箇所 |
| デザイン | トップページと下層ページ、スマートフォン表示の設計 | ロゴ・配色・写真などの既存素材 |
| 構築 | テーマの実装、管理画面から更新できる箇所の設計、プラグインの選定と設定 | — |
| データ移行 | 記事・画像の移行、URLの対応表づくり、リダイレクトの設定 | 引き継ぎたいページの指定 |
| 検証・公開 | 表示と動作の確認、リンク切れの点検、切り替え | 公開希望日 |
補足期間はご要望内容と規模で変わります。公開日が先に決まっている場合は、そこから逆算したスケジュールを組みます。
4. 検索評価を引き継ぐために必ずやること
リニューアルで検索からの流入を落とす原因は、デザインではなくURLの扱いにあります。次の4点は、公開前に必ず段取りしてください。
URLは変えないのが原則
ドメインをそのまま使い、各ページのURLも変えなければ、検索エンジン側の評価はそのまま引き継がれます。URLを変える理由が特に無いなら、変えないのがいちばん安全です。「ドメインはそのままでリニューアルできますか」という質問をよくいただきますが、可能です。むしろそれが基本形です。
変えたURLは301リダイレクトで新旧をつなぐ
ページ構成を変えてURLが変わる場合は、旧URLから新URLへ301リダイレクト(恒久的な転送)を設定します。ここで必要になるのが、旧URLと新URLの対応表です。作るのを後回しにすると公開直前に必ず慌てるので、設計の段階で作りはじめてください。
統合や削除でリンク先が無くなるページは、内容が最も近いページへ向けます。行き先に迷うからといって、すべてをトップページへ集めるのは避けてください。読者にとって手がかりが無くなります。
ステージング環境のインデックス拒否を、公開時に必ず外す
テスト環境では、WordPressの「設定 > 表示設定 > 検索エンジンがサイトをインデックスしないようにする」にチェックを入れて作業します。これを外し忘れたまま本番を公開すると、サイト全体が検索結果から消えます。リニューアル後に流入が消える事故の原因として最も多いものです。
Basic認証やrobots.txtでテスト環境を隠している場合も同じで、公開時に解除が必要です。公開作業のチェックリストに必ず入れてください。
公開後にサイトマップを送信し、表示を確認する
公開したら、Google Search Consoleでサイトマップを送信し直します。あわせて、主要ページがインデックスされているか、リダイレクトが意図どおり効いているかを確認します。構成を変えた場合、順位が落ち着くまでには時間がかかることがあります。公開直後の数字の上下だけで判断せず、しばらく様子を見てください。
5. 公開の切り替えはメンテナンス表示なしでできる
WordPressサイトをリニューアルの際は、みなさんどのようにリリースしていますか。多くの場合は、一旦メンテナンスページを設けてリリースする場合が多いのではないでしょうか。
サイトの規模にも依りますが、メンテナンス表示は差分データの刷新、動作検証などを含めると1時間前後が一般的なようです。
しかし所定の更新方法をすることで、WordPressサイトでも、メンテナンス表示をせず、リニューアル切り替えが可能です。
メンテナンスなしでの表示切り替え方法
新規のサイトの差分リソースを既存のサイトとバッティングしないよう配置します。準備ができたら、wp-config.phpと.htaccessにて新規リソースを読み込むよう保存します。
リニューアルの際に合わせてサーバ移管の要望もある場合は、先にサーバ移管をしてDNSの切り替えが完了してから実施することで、同様にメンテナンスなしで切り替えが可能です。サーバ移管そのものの流れはWordPressサイトのサーバ移管対応にまとめています。
サイトは企業の発信の根幹
顧客のためにも、リニューアルの際もメンテナンス表示をせず、継続的に表示を維持することも顧客満足度に繋がると考えています。サイトがいつでも閲覧できることを、当たり前に。サイトリニューアルもトラブルなく、スムーズに実施できることが大切です。
6. よくある失敗
公開後に更新できる箇所が決まっていない
WordPressを選ぶ理由の多くは「自分で更新したいから」です。どのページのどの部分を管理画面から変更できるのか、公開前に一覧で示してもらってください。ここが曖昧だと、文言ひとつの修正でも依頼が必要になります。
旧サイトのデータをすぐ消してしまう
公開後しばらくは、旧サイトのファイルとデータベースを保管しておいてください。表示の抜けやリンク切れは、公開してからしか見つからないものがあります。
ドメイン・サーバの名義が制作会社のまま
名義が自社にないと、次に乗り換えたいときに動けなくなります。リニューアルは名義を確認しなおす良い機会です。
保守を決めずに公開する
作り直した直後が最も安全で、その後は放置した分だけ危うくなります。誰が更新を見るのかを公開前に決めてください。
7. まとめ
WordPressのリニューアルで先に決めるのは、デザインではなく工事の規模です。全面か部分かは、今の課題が設計に起因するのか運用に起因するのかで決まります。
そして費用と同じくらい、URLの引き継ぎと、公開時のインデックス設定の解除を段取りしてください。この2つは、後から取り戻すのに最も時間がかかる部分です。
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